100th window
Massive Attack


90年代、マッシブ・アタックは英国で最も先進的なバンドとして文字通り孤高の存在だった。これまでの3枚のスタジオアルバムはどれもパイオニア的な傑作で、1991年の『Blue Lines』は英国史上最高のアルバムに数えられるほど賞賛された。だが今では「偉大なバンド」というより、オリジナルメンバー3人のうちでただひとり残った3Dことロバート・デル・ナジャによる「ワンマン・バンド」になっている。
本作は(少なくとも名義上は)マッシブ・アタックの4作目のアルバムだが、実質的にはデル・ナジャのソロデビュー・アルバムと言っていい。だが皮肉にも、ダディGとマッシュルームの低音のゆったりとしたラップがエリザベス・フレイザーとシニード・オコナーのはかないボーカルに代わったことを除けば、本作はこれまでのアルバムと同じく、まぎれもなくマッシブ・アタックらしいサウンドを響かせている。本作は不気味なほどに1998年の『Mezzanine』に似通っている。ときには苦しくなるほどに暗く重苦しく張りつめるなかを、デル・ナジャのくすんだ夜の音風景を通してのぞき見ることの許された一条の光が奇妙にゆらめいている。本作には、まるでクラナドがダブワイズのスタイルで演奏しているかのように聴こえるところ(鮮やかな「A Prayer For England」や思いがけないシングル曲「Special Cases」を聴けばわかる)もあれば、夜遅くブリストルの荒れ果てた場所をグリム・リーパーとともに軽快に歩いているかのように聴こえるところもある。
過去の鮮烈な作品のように本作にも新鮮さとオリジナリティーがほしかったが、実際には『Mezzanine』の偏執狂的な陰鬱(いんうつ)さをやり直しているにすぎない。もちろん、それでも本作が素晴らしいことに変わりなく、マッシブ・アタックと同じだけのぬくもりと重苦しさを持ってダークネスを奏でられる者が他にいないのも確かだが、できればアルバムの半分でもそうしたトラックがあればよかったかもしれない。

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